ハードウェアインザループ テストとは
自動車業界でのハードウェアインザループ (HIL) とは、レーダーやカメラなどの物理装置からデータ入力を受け取る特別に装備されたテストベンチ上で、複雑なソフトウェアシステムをテストおよび検証する方法を指します。
自動車業界が、主にソフトウェアを通じてより多くの機能を実現するソフトウェア定義の車両 (software-defined vehicle)に向かって発展するのに合わせて、車載ソフトウェア開発者も、開発方法を発展させています。迅速性に欠け、段階的に進むウォーターフォール方式が、継続的開発 (CD)、継続的インテグレーション (CI)、および継続的テスト (CT) に置き換わり、開発の迅速化、コストの削減、最終製品の品質向上につながっています。
代表的な CI/CD/CT シーケンスは、新しいソフトウェアの要件定義、コード生成、 ソフトウェアインザループ (SIL) シミュレーションテストの実施、継続的に発展するコードベースへの結果の統合、HIL によるテストおよび検証の実施で構成されます。
開発するソフトウェアの複雑さを考えると、手動によるテストの実施は現実的ではありません。実際の車両に物理的にソフトウェアをロードして、テスト走行を実施する場合、すべての運転条件でソフトウェアが機能することを確認するために、数十万マイルも走行することが必要になる可能性があるため、多額の費用と膨大な時間がかかります。
HIL の仕組み
HIL テストでは、テスト対象の電子制御ユニット (ECU) への車両および環境に関する入力をシミュレーションするため、実際の路上での運転条件に対して ECU が反応しているのと同じ状況が実現します。HIL ベンチには、関連するすべての車両コンポーネントが含まれています。シミュレーターが実際のカメラおよびレーダーシステムに入力を提供すると、それらのシステムからテスト対象システムに信号が送信され、テスト対象システムが入力に正しく反応するかどうかを確認できます。
たとえば、雨の中、車両が 60 mph でカーブを走行しているときに、路上に未知の物体が置かれていたり、対向車両がセンターラインをはみ出したりするシナリオをテストスクリプトによって作成できます。HIL テストベンチに取り付けられたカメラとレーダーが ECU に画像を送信し、テスト対象のシステムがリアルタイムでそのデータを処理して、対処方法を決定します。
HIL のメリット
次のようなさまざまな理由から、HIL テストは、最新の車載ソフトウェア開発プロセスに欠かせません。
- HIL テストでは、物理的な路上テストの実施に伴う時間やコストをかけずに、数百または数千のシナリオを実行できる
- HIL テストでは、路上でテストするには危険すぎるシナリオや現実的でないシナリオにも対応できる
- HIL テストは反復できる
- HIL テストは、高度に自動化されていて、マルチスレッド処理に対応できるため、複数のテストを同時に実施して、開発プロセスを迅速化できる
- HIL は、既知のシステム動作性能に基づくソフトウェア リリース プロセスを頻繁に実行できる
- HIL テストは、開発プロセスの中で SIL テストよりも後で実施されますが、CI/CD/CT プロセスのパラメーターの範囲内で実施されるため、開発者は、製品を OEM に出荷する前に潜在的な欠陥を見つけることができます。
- HIL テストの結果は、OEM やサードパーティの開発チームと共有できるため、開発の迅速化、品質、信頼性、安全性の向上につながります。
HIL テストベンチは、特定の場所に固定された物理装置であるため、以前はソフトウェア開発に分断が発生していました。現在、Aptiv はグローバルに利用可能なクラウドベースのアーキテクチャに移行しており、世界のどこからでも、テストベンチをリモートで一元管理できます。詳細については、車載ソフトウェア開発の未来に関する当社のホワイトペーパーをご覧ください。